ところで、私の人生における最大の楽しみの一つは「食べること」である。

学生時代からランチの食べ歩きに心血を注いでいた。社会人になったら、昼休みは「同じ課のOLとホテルバイキング」とか「たまには独りカフェランチ」などで満喫しようと固く決意していた。

そして銀行に入行。その決意はもろくも崩れ去る。

銀行規則に曰く「休憩時間の外出を禁ず」。昼食は支店の中で食べなさい、ということである。

今回はそんな銀行員たちの食事模様について語る。

まず、朝食。
現在の勤務先では朝デスクでパンをかじっている人を見かける。
では銀行では?
当然ノーだ。支店の机の上で飲食物を見たことがない。閉店後ですら、ペットボトルのお茶を出すのも憚られる雰囲気があった。銀行マンたるもの朝食は家で食べてくるべきものなのだ。

続いて、昼食。
昼食の場所は無残なくらい古く汚い食堂だ。通常は支店のパートのおばさんが全員分の賄いメシを作るのが一般的なようだが、私のいた支店にはそのようなサービスがなかった。よって、各自弁当を用意するか、出勤時にコンビニで購入してきていた。

銀行の休憩時間は就業規則上は「11:00〜13:00の間に1時間」である。当然これは建前。多くの男性行員は空いた時間を見つけて食堂に行き、おにぎりやらパンを缶コーヒーで流し込み、食べ終わるとすぐ持ち場に戻る。その時間平均10分〜15分であろうか。

私の場合は15時前後に独りで20分くらい食事を取るケースが多かった。時には一般職の女性も夕方16時頃に昼食を食べているのを目撃したこともあった。(一般職の方は昼時に40分くらい休むのが一般的だった)その時、彼女と「生まれ変わったら大手町で1時間ランチを食べに行ける会社に就職しようね・・・」と誓い合ったのを覚えている。

かくして、銀行では「理想のランチ像」とは程遠い昼食の光景が繰り広げられていた。

でも、昼食を食べられるだけでも幸せなことに気付かされる日がやってくる。

ある日、支店長が帰宅した直後、副支店長が皆に宣言した。

「今日の会議で支店長が『営業マンたちは数字(ノルマ)も達成できていないのに平気な顔で食堂で昼食を食べているのが私には理解できない』とおっしゃっていた。しばらく昼食は禁止な!」

「・・・は、マジ?・・・」

いつも席で踏ん反り返っている支店長が、毎日蒼白な顔で外を廻っている営業マンたちに向かってよくそんな事が言えるものである。だが「無理が通れば道理が引っ込む」のが銀行。

一応フォローしておくと他の某都市銀行では昼食なんぞ食べないのが普通とのことで、当行はメシの時間があるだけ甘かったのかも知れません(笑)

(つづく)